雑感

アヴェマリア

投稿日:2026年4月11日 更新日:

先のブログ「コラールカンタータ」で、私のこれまでの音楽鑑賞の道筋がかなり偏頗であったことの反省を記した。以下に記すことも、ほぼ同様の内容になる。

武蔵野市民文化会館のコンサートの申し込みは、競争がなかなか激しく、申込み開始時刻に合わせたつもりでも、希望する公演の予約がなかなか取れなかったりする。インターネット経由で申し込むのだが、すぐにはうまく繋がらないから、パソコンのキーボードを叩く際の、指運次第というところもある。

先日も、どの公演を申し込むかで、ずいぶん迷った。ベルリン・ドイツオペラで活躍中の、ニーナ・ソロドフニコヴァ(Nina Solodovnikova)というソプラノ歌手のリサイタルが目を引いた。案内文を見ると、ロシア人で、イタリアで学んだとある。これも前のブログに記したラウラ・ウジョアと同様、まったく知らない歌手である。

それで、Youtubeで調べてみた。いくつかの公演の動画があったが、それ以上に驚いたのは、この人の歌うジュリオ・カッチーニ(Giulio Caccini、1545~1618)のアヴェマリアが実に素晴らしいという評判が数多く見られたことで、それで早速視聴してみた。 なるほど、清楚な表情にぴったりの透明感のある美しい声で、伸びのある高音部など、とりわけ見事である。もっとも、10年前の歌唱の動画だから、現在の力量の判断にはならないのかもしれない。
しかし、この動画を見て、すっかり心を動かされたので、この歌手のリサイタルを申し込むことにした。指運もよく、チケットも無事手に入れることができた。

しかし、ここに書いてみたいのは、そのカッチーニのアヴェマリアをこれまでまったく知らずにいたことである。聴いたことがないどころか、曲名すら知らなかった。それで、いろいろ調べてみた。すると、世に「三大アヴェマリア」なるものがあり、シューベルト、グノー(原曲はバッハ)、そしてこのカッチーニのものがそれなのだという。前の二つはよく知っていて、旋律もすぐに頭に浮かぶのだが、カッチーニのものは、今回初めて聴いた。なるほど名曲である。

ところが、調べを進めて、さらに驚いた。カッチーニはイタリアの、ルネッサンスからバロック時代初期の作曲家だが、このアヴェマリアは、実はカッチーニの作ではなく、何と旧ソビエト連邦の作曲家ウラディーミル・ヴァヴィロフ(Vladimir Vavilov、1925〜73)の作なのだという。ヴァヴィロフは、リュート奏者でもあったらしく、自身で作曲した曲を、バロック時代の曲として発表することもしばしばあったという。このアヴェマリアも、もともとは作者未詳の曲として発表されたらしく、それがいつの間にか、カッチーニと結びつけられるようになったのだという。宗教曲でもあり、現代に作曲された曲ということもあって、私が耳にする機会がなかったのかもしれない。

このアヴェ・マリアが興味深いのは、歌詞が「アヴェマリア(Ave Maria)」のみだということである。「アヴェマリア」だけをひたすら繰り返す。こんなことは、シューベルトのものにもグノーのものにもない。
ソロドフニコヴァは、リサイタルの場でもこのアヴェマリアを歌ってくれるのかどうか。公表されたオペラのアリア中心のプログラムからはまったくの期待薄なのだが、それでもやはり一度は聴いてみたい。

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