雑感

長命寺の桜餅

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千葉の柏に所用があっての帰り、長命寺の桜餅が食べたくなって、北千住から東武電車に乗り、東向島で下りた。百花園の前を通り、墨堤通りに出て、「志゛満ん草餅」の前を過ぎ、「言問団子」の前を横切って、桜餅の店「山本や」にたどりつく。

ここの桜餅は、ずいぶん久しく食べていない。最後に食べたのはコロナ禍以前のことになるから、ひょっとすると十年近く食べていなかったのかもしれない。
長命寺の桜餅は、他の店のものとはずいぶんと違う。ここのは、塩漬けの桜の葉を三枚用いる。伊豆のオオシマザクラの葉だという。餡もおいしいが、それを包む薄い餅の皮も、独特な味わいがある。着色などしていないから、色は白っぽい。道明寺粉を用いた粒状の餅でくるんだ関西風の桜餅などとは大違い。ここのはやはり別格だと思う。

この長命寺の桜餅を、懐石料理「辻留」の当主だった辻嘉一が、名著『味覚三昧』の中で絶賛している。京育ちの辻が褒めているところがおもしろい。

……桜の葉の匂いのついたさくら餅の薄い皮は、他に見かけない独特の軟かさであり、口触りのよいおいしさで、これこそが江戸の味なりと一人ぎめにして楽しんでおります。
あの薄い皮の良さは、散り急ぐ桜花の可憐さに通じる淡い味であって二度蒸しをされるのか、二度搗きなのか――と思いながら味わっているうちに、ほのかな、あるかなしかの甘味が、春のはかなさに通じる舌ざわりとなって、京育ちの江戸好きには仕合せを与えてくれます。

まことに見事な紹介文であって、これ以上の言葉はいらない。それゆえ、あえて引用させてもらった。

長命寺の桜餅は、一つ300円。諸物価高騰の折に、この値段はなかなか良心的だと思った。
そういえば、「羽二重団子」も、久しく食べていない。また食べにいかなければ。

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