先のブログで一等車について書いた。
昭和35年(1960年)、旧来の一等車が廃止され、三等級制から二等級制に変わり、旧来の二等車が一等車に、三等車が二等車に格上げになったと記した。切符の色も、新たな一等車が旧来の二等車の色である青に、二等車が旧来の三等車の色である赤になったと書いた。
大筋はそれで間違ってはいないが、実はもっと複雑な変遷があったことを、築島裕先生の『鉄道きっぷ博物館』(日本交通公社)で知った。
それによると、旧来の一等は昭和35年5月31日限りで廃止され、6月1日から30日までは、二等と三等の二本立てとなり、旧来の二等→一等、旧来の三等→二等の格上げは、7月1日以降のことであることがわかった。
切符の色も、7月1日以降、新一等が薄緑色、新二等が淡青色(青)とされ、一時、赤色の切符は消えたという。赤色の切符が再登場するのは、昭和37年頃のことだとある。それも全国一律ではなく、地域によっては淡青色(青)の二等切符もしばらく使われていたという。知らなかっただけに、これには驚いた。
本の著者を築島裕先生と書いたのは、私の恩師のお一人だからである。築島先生は、国語学の文字どおりの泰斗で、とくに訓点語研究において、卓越した業績を挙げられた。私など、演習にはとてもついて行けそうもなかったので、講義だけを聴講した。
先生は、国語学の万端にわたって通じておられ、教科書として刊行された『国語学』(東京大学出版会)は、実にすぐれた概説書で、大学院受験の際には、ずいぶんとお世話になった。いまも、こうした概説書はあるが、これ以上のものはないと思う。
『鉄道きっぷ博物館』は、その築島先生が、一点一画をも忽(ゆるが)せになさらない、御自身の研究を彷彿させるような方法で、切符についてのあれこれの情報を整理・分類され、その歴史的変遷を詳しくたどられた本である。「あとがき」には、御自身で収集された切符は、押し入れをほぼ占領するほどだと記しておられる。昭和55年8月の刊行である。
この本は、刊行されてすぐに購入したのだが、書架の片隅に埋もれていて、先のブログを書いている際には、その存在を思い出さなかった。それで、いまその内容の一端を、余説として記しておく次第である。