雑感

聴覚の老化

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最近、身体のあちこちに不具合が現れるようになった。頭も呆け気味だが、これはどうやら、外で話す機会が少なくなったためもあるらしい。先のブログに記した腱鞘炎も、パソコンのキーボードやマウスの過度な使用が原因というよりは、加齢の所為であるに違いない。

先日、眼科に行ったら、白内障が少しずつ進んでいると言われた。落語に「文違い」という話がある。その中に、男が女郎を騙して金を貢がせる場面がある。その際、男は金の要る口実に「内障眼」を治療するためだと言っている。白内障は、この「内障眼」のことだろうか。あるいは、失明するとも言っているから、緑内障なのかもしれない。男は「真珠」という薬が特効薬だとも言っている。調べてみると、「真珠散」という古い眼病の薬がある。その類なのだろうか。もっとも、私の白内障は、手術というところまでには、まだ間があるらしい。

もう一つ。聴覚もずいぶんと衰えた。これは、かなり前からのことで、周波数の高い、いわゆるモスキート音は、四、五十代の頃から聞こえなくなった。野良猫を防ぐ目的で、庭に超音波発信器を置いているのだが、その発するモスキート音は、私にはまったく聞こえない。孫たちはその横で耳を押さえたりするから、よほど不快な音が聞こえるのだと思う。
再生装置のスピーカーの性能を試すCDというのがある。低音、高音のどこまで再生できるのかを検証するCDなのだが、スピーカーの性能を評価する以前に、私の耳には高音の高いところはまったく聞こえないし、聞こえるレベルも、年々低くなっている。

音の高さもそうだが、音そのものも、近頃は聞きにくくなっている。会話の中で、「え?、え?」と、時折聞き返すこともあったりする。テレビの音声も、はっきり聞き取れないこともある。だから、やむなく音量を上げて視聴している。

それで思い当たったことが一つ。NHKのBS放送では、毎朝八時から「ワールドニュース」という番組を放映している。「日本で流れるニュースが海外ではどのように報道されているのか、日本語通訳つきの2か国語放送で伝えます。さまざまな言語に触れることもできる番組です」と説明されているように、世界各国のニュースを同時通訳で伝える番組である。学習用とはいえ、英字新聞を愛読している立場からすると、この番組を興味深く視聴できそうなはずだが、まったくその気になれない。その理由が、上に記したことと結びついている。
同時通訳は、外国語に堪能なだけでは勤まらず、その内容を即座に適切な日本語に置き換える能力が求められるから、頭脳はフル回転、大変な緊張が強いられる。それゆえ、長時間継続して担当するのは無理だと聞いたことがある。
そうした事情を承知で言うのだが、「ワールドニュース」の同時通訳は、私の場合、どうあっても耳がついて行けない。アナウンサーではないのだから、当然ではあるのだが、同時通訳者は、概して滑舌がよくない。その声で、もとの外国語を即座に翻訳しようとするから、いきおいかなりの早口になる。つっかえたりすることもある。だから、よく聞き取れないし、聞いているうちに苛々してくる。それで、チャンネルを替えることになる。そのことに気づいたのである。
だから、これは、同時通訳者の責任ではなく、こちらの耳が老化した、その現れであるに違いない。とはいえ、こうして少しずつ世間から隔てられて行くことになるのだとすると、はてさて、困ったことである。

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