雑感

アンケートの恣意性

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ずいぶん以前に、このブログの「世論調査」と題する記事の中で指摘した、アンケートの恣意性に、ぴたりと重なるような報道に接したので、そのことについて記す。

本日(1月15日)のNHK TVの朝のニュースを見ていたら、阪神淡路大震災から、この17日でちょうど30年になること、その上で、被害が大きかった地域に住む人々を対象に、NHKがアンケートを行った、その結果が紹介されていた。

そのアンケートによれば、震災を経験した人々に、当時の教訓などを誰かに伝えたことがあるかを聞いたところ「ない」と答えた人が半数以上にのぼったこと、それを受けて、防災心理学を専門とする兵庫県立大学の教員の、「行政や地域などが語りやすい“場”をつくることが一層求められる」とする談話が、紹介されていた。

一見したところ、何もおかしなところはなさそうな内容なのだが、私には、やはりそのアンケートの不自然さがつよく感じられた。これもまた結論ありきのアンケートだと思われたからである。恣意性と記したのは、それゆえである。

私がどこに不自然さを感じたかを示すために、NHKのHPから、その内容を文字化したものを引用してみる。

震災の体験や教訓を誰かに伝えたことがあるか聞いたところ、半数を超える53%の人が「ない」と答えました。
震災について家族や友人などと話すかどうか尋ねた質問では、話さないと答えたのが
▽「家族」の間が62%
▽「友人・知人・同僚」が71%
▽「地域の人」が83%でした。
話さない理由を複数回答で聞いたところ、
▽「話すきっかけがない」が74%と最も多く
▽「住民の移り変わりで話す相手がいなくなった」と
▽「相手を暗い気分にさせたくない」がともに11%
▽「自分の体験は重要ではないと思うから」が10%などとなっていて
震災について話すことへのためらいがあることがうかがえます。

実に愚劣な質問項目が並んでいるが、先の防災心理学を専門とする教員が、この作成に関与したらしい。別の箇所に、アンケートを監修したと明示されているからである。

さて、このアンケートだが、こんな答えが返って来るのは当たり前のことで、どんな大災害であっても、その直後ならともかくも、平穏に戻った日常生活の場で、そのことを取り立てて話題にすることなど、まずありえない。もし話題にすることがあるなら、それは必要に迫られてのことだろう。
話さない(話題にしない)理由を尋ねた質問項目でも、「話すきっかけがない」という答えが圧倒的に多いのは、不思議でも何でもない。むしろ、半数近くの人たちが、震災の体験や教訓を誰かに伝えたとあるではないか。必要があれば話す。ここは、そう見なければならない。それを、「半数を超える53%の人が「ない」と答えました」のようにまとめているのは、否定的な方向に誘導しようとする意図があるからだろう。上に記したように、「半数近くが「ある」と答えた」と、なぜ記さないのか。そう記してしまえば、アンケートのねらいの妨げとなるからだろう。

アンケートの分析は、最後に、「震災について話すことへのためらいがあることがうかがえます」という言葉で唐突に結ばれている。どういう脈絡で、そんな結びの言葉が出てくるのか。実に不思議である。
――話すことに皆がためらいを覚えているから、もっと話しやすい場を作らなければならない。そうした結論を導くための意図的なアンケートであることが、ここからも透けて見える。

アンケートなど、所詮、そうしたものでしかない。だから、私はまったく信用しないし、それに協力するつもりもない。そのことは、先のブログにも書いたとおりである。

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