先日の閣議で、高齢化対策の中長期の指針となる大綱の改定が決定され、後期高齢者、つまり75歳以上の高齢者の医療費について、窓口負担が3割となる人の範囲の拡大を検討する旨明記されたことが報道された。
後期高齢者の病院などでの窓口負担は年収に応じて決められるが、現役並みの収入がある人を別にすれば、1割負担、2割負担が大半を占める。
私はこの2月に後期高齢者になったばかりなのだが、それまでの3割負担が2割負担になった。だから、私の場合も、この大綱改定の流れからすると、どこかでまた3割負担に戻るのかもしれない。年金収入のほかには、わずかな収入しかないのだが。
数字の詐術と書いたのは、この負担割合のことである。2割負担が3割負担になるとは、1割増しで、一見大きな違いとは思われない。ところが、実際の窓口負担は5割増しになる。2000円で済んでいた支払いが3000円になる。昨年、一月(ひとつき)ほど入院したが、その際は3割負担だった。現在の2割負担で計算すると、支払う額はずいぶんと減る。2月以降、後期高齢者になり、2割負担になって、病院や薬局で支払う額が少なくなったことに驚いた。だから、また3割負担に戻るとなると、家計にとっては大きな打撃になる。
3割負担の範囲を拡大し、2割負担を3割負担にというのだが、繰り返すように、実際の負担は5割増しになる。それゆえ、数字の詐術と記したのである。適切な喩えではないが、すぐに朝三暮四(ちょうさんぼし)の故事を思い出した。5割増しであることを隠蔽し、2割から3割への変更だから、1割増しに過ぎないと言いくるめているとしか思えないからである。為政者にとって、私たちは愚かな猿と同じなのだろうか。数字の詐術に騙されてはいけない。