雑感

名古屋の菓子

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年に二~三回だが、卒業生や、その教え子たちと研究会を開いている。先日も、その研究会があったのだが、終了後の懇親会で、なぜか話題が名古屋の菓子になった。

名古屋といえばういろうだが、ここに記すまでもなく、もともとういろうは「透頂香(とうちんこう)」という名の漢方薬を製造する小田原の外郎家(ういろうけ)が創作した菓子で、それがどうして名古屋名物になったのか、その理由はよくわからない。
そのういろうだが、昔は「青柳」のものしか知らなかった。しかし、ある時、近世演劇、芸能史の大家である安田文吉氏から、ういろうなら「餅文(もちぶん)」のものがいいと聞かされてからは、そればかりを買うようになった。たしかに、「青柳」のよりもずっとおいしい。

名古屋の菓子ではないが、名古屋駅で買える菓子に、四日市の笹井屋の「なが餅」がある。長く延ばした餅に餡を入れ、裏表を軽く焼いてある。「なが餅」を知ったのは、森川昭先生の『東海道五十三次の事典』(三省堂、その改訂版が『東海道五十三次 ハンドブック』)を読んでからである。そこには「なが餅」の来歴を記したあと、「北海道産の小豆(しょうず)を昔ながらの方法で煮る。白(はく)ザラを使うから甘みは薄い。餅を搗(つ)き、あんを包み細長くする。…一枚一枚焼く。できたてはとろけるようだ。まず海道屈指の銘菓」と記されている。これはぜひ食べてみなければというので、探したら名古屋駅でも売っていた。家のトースターで焼いて食べてみた。できたてほどではないだろうが、なるほどこれは銘菓に違いない。それ以来、名古屋に行くと必ず買って帰るから、私にとっては名古屋の菓子ともいえる。

もう一つ。これも名古屋ではなく、その近郊の江南市布袋(ほてい)にある大口屋の「餡麩三喜羅(あんぷさんきら)」である。三帰来(さんきら)の葉に包まれた麩饅頭である。姜尚美(かん・さんみ)氏の『あんこの本』(京阪神エルマガジン社)に紹介されていたのを見て、その存在を知った。ついでながら、この『あんこの本』は、名著といってもよい。それで、わざわざ名鉄に乗って、買いに行った。なるほど、京都あたりの麩饅頭とはまったく味が違う。その違いは、言葉では説明し難いが、食感も含めて、何とも美味というしかない。その後、名古屋駅でも買えるようになったから、これも私にとっての名古屋の菓子である。

コロナ禍前は、毎年一度は、名古屋に出向いていた。『万葉集』の学会である美夫君志会(みふくしかい)の大会が、名古屋で開催されていたからである。しかし、最近はまったくの御無沙汰である。だから、ここに記したお菓子もずっと食べていない。

お菓子とは違うが、その美夫君志会に出席する途中、渥美半島に立ち寄り、そこで栽培されているメロンを買い求めて、家に送ってもらうこともあった。マスクメロンではあるが、東京の果実専門店で売っているような高級品ではなく、だから値段もずいぶんと安い。六個入りを送ってもらい、半分に割ったメロンを毎日食べるという贅沢をしたこともある。

お菓子もメロンも、いまのところ夢のまた夢である。

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