二つ折りの財布をずっと愛用している。
長い財布は、どう見ても不便そうである。夏など、その長い財布を、ズボンの尻ポケットに入れている人を見かけることがあるが、よく掏(す)り盗られないものだと思う。
二つ折りの財布は、どのポケットにも収まる。シャツの胸ポケットにも入るから、それが有り難い。付け加えると、小銭入れは、キーホルダー付きのものを、別にしている。
そうやって、しばらく愛用してきた二つ折りの財布が、かなりくたびれてきた。それで、買い換えようと思って、いろいろ調べたら、驚くことに、サイズがどれも大きくなっている。
その中で、もっとも小さなものを、通販で買い求めたのだが、ジャケットの内ポケットには何とか収まるものの、シャツの胸ポケットには、まったく入らない。ジャケットに収まるといっても、出し入れの際には、引っかかることもしばしばである。
ジャケットを着ない時には、仕方がないので、腰にポーチを装着して、その中に財布を入れている。ずいぶん馬鹿げたことだと思う。
ここでさらに昔のことを振り返ると、二つ折りの財布はもっと小さかったような気がする。どうして、こんなに大きくなってしまったのか。
持ち歩くカード類が増えたのはたしかである。クレジット・カードのほかにも、PASMOのカード、保険証、運転免許証、身分証明書などが入れてある。名刺入れを別に持つのは厭なので、名刺も何枚かは入れてある。だが、前の愛用の財布には、これらもみな収まっていた。
女の財布――これは長い財布になるが、女の財布には、クレジット・カードだけでなく、デパートやスーパーのカード、割引券類、果ては病院の診察券などが、ごちゃごちゃ入っている、というのが通り相場のようである。男の財布が大きくなったのは、女の財布に近づいたからなのだろうか。
どこかに書いたかもしれないが、私はいまだにスマホは持っていない。だから、スマホを利用した決済とはまったく無縁である。世間では、そうした決済が一般化しつつあるらしいから、財布は小さくなってもよさそうなものだが、事態はむしろ逆である。このあたり、なぜそうなるのかがわからない。
すっかりくたびれて、縁(ふち)のすり切れた、以前の二つ折り財布を、修繕してもらおうとも考えたが、新しい財布を買うより、ずっと費用がかかりそうなので、それは止めにした。
小さくても、カード類が入れられる二つ折りの財布を、どこかで作ってくれないものかと思う。