前から気になっている言葉がある。オオバ(大葉)である。青じその葉のことだが、こんな言い方は昔はしなかった。手許にある『日本国語大辞典』縮刷版は、前にも書いたように、第一巻の刊行が昭和54年だが、そのオオバの項目を見ても、青じその葉の意味はない。平成10年刊行の中型国語辞典、増補・新装版『大辞泉』では、オオバのところに、「①大きな葉」とあり、さらに「②刺身の敷きづまなどに用いる青じその葉」と出てくるから、大まかな目安ではあるが、この間に青じその葉を大葉と呼ぶようになったらしい。
だが、オオバ(大葉)というのは、どう考えてもおかしな呼び名である。朴葉(ほおば)のような葉なら、大葉でいいかもしれないが、青じその葉など、少しも大きくはない。
ここからは、まったくの推測になる。オオバはアオバ(青葉)の訛りなのではあるまいか。しそは漢字で書けば紫蘇であって、もともとは赤紫の紫蘇を意味した。青じその呼び名は、赤紫の紫蘇と区別するために、頭に「青」を加えたのだろう。その葉を、どこかでアオバ(青葉)と呼ぶようになり、それが訛ってオオバになったのではないか。もともとは青果市場などでの符丁だったようにも思うのだが。
そんなわけで、オオバ(大葉)は奇妙な言葉だと思うので、私は使わない。ニンニク(大蒜)を「人肉」と書いた宛字をどこかで見たことがある。それほどひどくはないが、オオバはやはり気持ちが悪い。
青じそは、日本の土壌でないとうまく育たないと聞いたことがある。ヨーロッパに持っていって移植しても、青じその葉の生命ともいうべき香りが徐々に失われていくのだという。真偽のほどはわからない。
オオバ(大葉)の呼び方について、もし別の理解があるなら、ぜひ御教示願いたい。