雑感

ありがとうございました

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しばらく前から、気になっていることを書いてみる。

テレビやラジオの番組で、識者とされる人物に、時折意見を求めることがある。何かしらの発言が終わると、その番組の進行役(多くはアナウンサー)は、「ありがとうございました」と礼を述べる。それに対して、発言した人物もまた、鸚鵡返(おうむがえ)しに、「ありがとうございました」と応ずる。ほとんど例外なくそうである。

進行役が礼を言うのはいい。だが、発言した人物は、なぜ「ありがとうございました」と返すのか。ここがずっと気になっている。礼を述べる必然性がないからである。
「私の発言を聞いてくれてありがとう」という意味なのだろうか。まさか「私を番組に出してくれてありがとう」というのではあるまい。「出演料をありがとう」となれば、あまりにも卑俗に堕するが、そんな愚劣な想像まで頭に浮かんで来るのは、礼をいう意味がわからないからである。

では、こうした場合、何と言えばいいのか。そういう機会などないけれど、もし私なら「失礼しました」と応ずると思う。
以前、このブログに、大昔のTBSのラジオ番組「落語名人会」のことを記した。その演者の中に、四代目三遊亭円遊がいた。円遊は、一席演じた後(あと)、アナウンサーの質問に答えて、時折、興味深い裏話を話してくれた。それが終わると、アナウンサーの御礼の言葉に答えて、「どうも失礼をいたしまして」と応じていた。このやりとりこそが、自然であるように思う。

些細(ささい)なことでもあるし、誰も疑問を抱かないのだろうが、こうしたところにも、日本語が劣化していくさまが現れているように思うのだが、どうだろうか。そのあたりは、このブログを始めた頃に書いた「多大な御迷惑と御心配を…」にも重なるところがある。もっとも、そちらには政治的な思惑もあったりするのだが。

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