雑感

尾先四白(おさきよつじろ)

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小学生の頃、文鳥やセキセイインコを飼っていたことを、前に記した(「猫嫌いの理由」)。

それ以前、四、五歳時分に犬を飼っていたことがある。もはや記憶の彼方ではあるが、その頃の写真がアルバムに残っている。三輪車や庭のブランコに犬と一緒に乗っている写真もある。ピーコという名もそこに記してある。
ピーコは雑種で、小さな犬である。子犬だったのかもしれない。全体が黒色で、四足と尾の先がどちらも白い。表題にした尾先四白(おさきよつじろ)である。

尾先四白の犬は、霊性がきわめてつよく、飼ってはならないとする禁忌があったらしい。飼うと主人(あるじ)に禍(わざわい)が及ぶのだという。
家の年寄りが、どこかでそれを耳にしたらしく、いつのまにか家から犬の姿が消えた。ずいぶん後(あと)になって、近くの人にもらわれたと聞いた。ピーコの思い出は、だから写真の中にしか残されていない。もらい受けた近くの人は、尾先四白を気にしなかったのだろう。

尾先四白の禁忌は、どこに淵源があるのか、調べてみたがわからない。信州の伝承とする説もあるようだが、確かなことはわからない。

過日、火野正平の「日本縦断こころ旅」(NHKBS)の再放送を見ていたら、そこに映ったどこかの家の飼い犬が、まさしく尾先四白だった。何県の旅であったのか、いまは思い出せない。中国地方のどこかだったかもしれない。その映像からは、大事に飼われているらしいことがうかがえたから、飼い主には、それを禁忌とする意識はないのだろう。

迷信だとわかっていても、主人に禍が及ぶと言われたら、どうするか。私のように、物事を気に掛ける人間には、その答えはなかなかはらりとは出てこない。

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