明け方、またこんな夢を見た。
コロナ禍以前に、よく通っていた小さな洋風居酒屋が、庭園風の公園の中に店を出したというので、行ってみた。
立派な門構えの公園で、守衛も立っている。すでに夕方だが、まだ閉園時間ではないのを確かめてから、中に入る。
木々の間の道を進んでいくと、前方にぼんやりと燈火(あかり)が見える。建物もあって、その一角が上に突き出たところに、店の名が英字で書いてある。近づいていくと、道に沿った、芝生のところに、横長のカウンターが設(しつら)えられている。その前には、丸テーブルも何卓かあって、ほどほどに賑わっている。ウエイターらしい、黒服の男たちも立ち働いている。
コロナ禍前に、前の店をよく訪れていた者だがというと、今日はあちらに主人が来ているという。それで、店の奥をのぞくと、見慣れた顔の主人がいた。赤いコック服である。その顔がなぜか、「料理の鉄人」の坂井シェフにそっくりである。こちらが名のると、最初は怪訝(けげん)そうな顔をしていたが、どうやら思い出したらしく、外に出て来て、懐かしさのあまりか、抱擁してくれた。気がつくと、私よりずっと背が低い。
それで、前の店では、気に入ったワインがあると頒(わ)けてくれたはずだがというと、さらに横のカウンターで受け付けているという。
そこに行ってみると、誰もいない。奥の壁に棚があるが、ワインの箱がいくつか並んでいるだけで、実に殺風景である。それでも、ワインをどれか選んで、お土産にパイ包みを頼もうか、と思ったところで目が覚めた。
実に不思議な夢である。そんな懇意な洋風居酒屋など、もともとない。英字で記された店の名を見て、ああここだと思ったのだが、夢が覚めたら、その名も忘れている。主人が坂井シェフそっくりだったのは、何日か前に、テレビのCMか何かで、その姿を見たからかもしれない。なぜこんな夢を見たのかわからない。