以前にも書いたかと思うが、私はいまだにスマホを持っていない。私の携帯は、二つ折りの旧式なものだが、これまでは、それで不便を感じたことはなかった。
インターネットとの接続は、パソコンで行っているし、メールのやりとりも同様である。旅行などの際には、ipadがあるから、それで用が足りる。
写真撮影もフィルムにこだわりがあるから、あえてスマホで撮ろうとも思わない。ミノルタの超小型カメラTC-1をいまだに愛用している。
ところが、雲行きが少しずつおかしくなってきた。スマホがないための不便を感じるようになってきた。
ごく最近、ある学会の大会の案内状が送られて来たが、参加登録をするためには、案内状に印字されたQRコード(二次元バーコード)を読み取る必要がある。だが、私のパソコンには、それに対応するカメラが付いていない。仕方がないので、ipadを起動し、それで対処した。実に面倒である。誰もがスマホを所持していることが、前提になっているのだろう。
昨日も、不便を感じたことがあった。
古事記学会の大会で、宮崎に出掛けたのだが、飛行機に乗るのは、コロナ禍もあって、ずいぶんと久しぶりである。今回はANAを利用した。
これまでは、パソコンで便を予約し、QRコードの印字された、eチケットの控え(正式名称は失念)を印刷していた。そのQRコードで、搭乗手続きもできた。
ところが、今回は、eチケットの控えにQRコードは印字されておらず、オンラインでのチェックイン後に、改めてQRコードの印字された搭乗券をプリントアウトする仕組みに変わっていた。
行きは、それでよかった。ところが帰りで困った。オンラインのチェックインが可能になるのは、飛行機の出発時刻の24時間前からとされていたからである。チェックイン自体は、ipadでできるのだが、旅先ゆえ、搭乗券のプリントアウトができない。ipadでも搭乗券の画面は出せるのだろうが、いちいち空港で起動するのは面倒である。
そこで、どうすべきかを問い合わせたら、空港のカウンターでチェックインをお願いします、との答えだった。アナログ時代にまったくの逆戻りである。
スマホを持っていれば、チェックインもできるし、スマホの画面がそのまま搭乗券代わりになる。私のようにスマホを厭がる人間は、ほとんどいないだろうから、こうしたことで困る人間もいないのだろう。
だが、私にはしつこいところがあるから、なぜQRコードを印字したeチケットの控えが、以前のように発行できないのかを尋ねてみた。印刷するのは、こちら側の負担であり、航空会社の利点(たとえば経費節減)につながるとは、思えなかったからである。ところが、答えは簡単で、不正防止が第一の理由であるという。ならば、引き下がるしかない。これでいよいよ、スマホがなければ、飛行機にも簡単には乗れなくなってしまった。
昨今は、JRの特急券、指定券なども、予約も含めて、スマホ利用が前提になりつつある。私は、相変わらず、パソコンで予約し、予約の詳細を記した紙をプリントアウトし、駅の券売機で購入しているが、最近、その紙にもQRコードが印字されるようになった。券売機にも、QRコードを読み取る仕掛けが追加されている。
JRは、紙の特急券、指定券を廃止したがっているようだから、ここでもスマホがなければ、どうにもならないような状況が生み出されつつあるのだろう。
コンビニなどでも、スマホで支払う客が多くなった。ひょっとすると、私のような現金払いは、いまや少数派かもしれない。
スマホの決済は、銀行預金などと連動しているはずだから、年金生活者の私としては、なかなか利用する気にはなれない。手許の現金がいくらあるかの確認ができなければ、日々の生活が成り立たないからである。
現金払いは受け付けませんという店も、そのうち現れるようになるのかもしれない。困ったことである。
以前、ある店で、支払いの手段を尋ねられた際、ついうっかりと「スマホは持っていないので」と、言い訳めいた言葉を口にしたら、若い女性店員が、「御高齢の方でも、最近は操作も簡単ですし、講習会などもありますよ」と、応対してくれた。親切心からではあろうが、そんな年寄りと見られているのだ、ということがわかって、少々狼狽した。
以上挙げたのは、ごく最近の事例ではあるが、間違いなく、一人ひとりがスマホを所持していることを前提とする仕組みが作られつつある。スマホの利用を、社会全体が強制しつつあると言い換えてもいい。
そこで、どうすべきなのか。不便な状況がこれ以上拡大するようなら、どこかでスマホに乗り換えざるをえないのかもしれない。それにしても、あの馬鹿高い料金は、どうにかならないものか。