毎年、虎の門病院で人間ドックを受診している。事前に、健康状態等を記入する質問表が届くのだが、どう答えてよいのかがわからない項目がある。「特定健康診査(特定健診)に関する質問(その2)」「保健指導・今後の方針決定に関する質問」の二箇所に、「運動や食生活等(など)の生活習慣を改善してみようと思いますか(思う)」という項目があり、以下のいずれかにチェックを入れるようになっている。ほぼ同文の選択肢なので、前者のみを掲げる。
改善するつもりはない。
改善するつもりである(概ね6ヶ月以内)
近いうちに(概ね1ヶ月以内)改善するつもりであり、少しずつ始めている。
既に改善に取り組んでいる(6ヶ月未満)。
既に改善に取り組んでいる(6ヶ月以上)。
毎年、この項目のところで、いつも当惑している。何らかの指摘があり、改善する必要があれば、そのように努めるだろうし、その必要がなければ、そのままにしておく。それが、私の認識なのだが、それに当てはまる選択肢がどこにもない。
そもそも、「改善するつもりはない」というのも、穏やかならぬ文言で、これは、改善を勧められても(あるいは改善の必要があっても)、それは一切しない、という意味にしか受け取れない。
この質問項目の拙(まず)いところは、その前提がまったく記されていないところにある。何らかの指摘を受けてからのことなのか、それとも自分自身の主観的な認識、――生活習慣を改善したいとする主観的な認識の有無を問うているのか、そこが、まったくわからない。仮に後者だとしても、その認識が無い場合、「改善するつもりはない」とは、すぐには結びつかない(結びつく人もいるかもしれないが)。むしろ、「(いまは)何もしていない」という選択肢を用意するのが自然だろう。
昨年、虎の門病院の受付で、この質問項目は、意味不明でおかしい、ということを申し出た。この質問表は、虎の門病院が独自に作成したものではなく、その雛形は、もっと上位の統轄組織、人間ドックなどの検診を統轄・指導する、厚労省(?)かどこかの組織で決められたものらしい、ということを、そこで聞いた。なるほど、二松学舎に在勤していた際にも、健康診断の際に配られた質問表に、まったく同じ文言の質問項目があったのを、思い出した。
おそらく、これまでは、大人の智恵を働かせて、もっとも無難な「改善するつもりである(概ね6ヶ月以内)」あたりに、チェックを入れていたのだろうと思う。
こうした瑣末(さまつ)なことに拘(こだわ)るようになったのも、年齢による呆けのせいであるのかもしれない。とはいえ、おかしなものは、やはりおかしい。呆けを口実にして、あえていうなら、この項目を作成した人は、リテラシーがどこか欠けているように思う。