雑感

オックスフォードのガウン

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例によって、テレビで外国のミステリーばかり見ている。
英国のものでは、コリン・デクスター原作の「モース警部」、そこからのスピン・オフ作品である「ルイス警部」、また若き日のモースを描いた「刑事モース」など、繰り返し放映されるので、よく見ている。すべて、オックスフォードが舞台だが、あんな小さな大学町で(人口は20万人程度だろう)、年中、殺人事件が起こっていることになるから、よく考えると、これはおかしい。

オックスフォードは、一度だけ行ったことがある。これも20年ほど前のことになる。ロンドンからバスで、一時間半くらいの距離である。
東洋研究所にいらした某先生を訪問したのだが、ついでに先生の所属するカレッジ、Pembroke Collegeに案内され、そこの食堂で、昼食を御馳走になった。昼食専用の食堂で、夕食用の食堂は別にあり、さらに食後のコーヒーを飲む談話室まで付属している。学生は立ち入れない。そこで、数学や経済学の先生にも紹介されたのだが、こうしたカレッジでは、専攻を異にする教員同士が、コーヒーやお茶を飲みつつ会話を楽しむのが常態であるらしく、これこそが大学本来のありかただと、いたく感心したのを思い出す。

その談話室の壁には、黒いガウンがずらりと掛かっていた。夕食時には、ガウンを着用するのが原則だとも聞いた。
「モース警部」等々を見ていると、画面に出て来る教員たちも、そのガウンを羽織っている。授業の際には、それを着用するのが正式なのだろう。

そこで思いあたったのが、開成高校(荒川区西日暮里)である。大昔、東大の助手をしている頃に、非常勤講師として、教えに行ったことがある。
その職員室の壁には、やはり黒いガウンがずらりと掛かっていた。授業の際に、教員が着用するのだが、専任教員だけで、非常勤講師に、ガウンはない。なぜガウンを羽織るのかを、親しい教員に尋ねたら、白墨(はくぼく)の粉の汚れを防ぐため、という答えだった。
もしそうなら、どこの中学、高校でも(場合によっては、小学校でも)、そうしたガウンがあってもよさそうなものだが、寡聞にして、他の学校の例を知らない。

「モース警部」等々を見ていて、オックスフォードのガウンから、大昔の開成高校の記憶が甦った。

開成高校では、いまもガウンを着用しているのだろうか。そもそも、それを羽織る慣習は、どこから生れたのか。英国のカレッジの伝統とつながりがあるのかどうか。そんな疑問が、いまも頭の中に残っている。

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