雑感

検察側の証人・続

投稿日:2022年10月1日 更新日:

前のブログで、アガサ・クリスティの短編「検察側の証人」を原文で読もうと、AMAZONに注文したら、原作そのものではなく、学習者向けに平易に改めた本文が届いたことについて書いた。英国、グラスゴーの出版社、Collinsが刊行する、Collins English Readersの中の一冊で、読者の英語力に応じたLevel設定がなされており、「検察側の証人(原題は“THE WITNESS FOR THE PROSECUTION”)」は、Level3、intermedeateとある。七段階ある中で、下から三番目である。印象としては、高校一年生の教科書程度のLevelではないかと思う。

時間があったので、「検察側の証人」に続けて、併載されている“THE RAJAH'S EMERALD”、PHILOMEL COTTAGE”、“THE ACTRESS”も読んでみた。どれも、1~2時間で、ほとんど辞書も引かずに読むことができる。おもしろかったのは、“PHILOMEL COTTAGE”で、邦題は「ナイチンゲール荘」「うぐいす荘」などと呼ばれているらしい。PHILOMELは、ナイチンゲールの古語、詩語という。これも、クリスティーの原文と、どれほど違うのかは定かではないが、次第に不安に苛(さいな)まれていく主人公の女の描写が、実にスリリングで、改められた本文とは思えないほどの緊張感を感じた。

この本で感心したのは、学習者向けに、実に懇切な対応がなされていることで、英国の司法制度についての簡単な説明があることは、前回のブログでも触れたが、そのほかにも死刑制度、階級制度についても、要点を押さえた同様な説明が施されている。

とりわけ、興味深かったのは、重要な単語に付された説明である。単なる辞書的な説明に留まらないことに感心した。たとえば、shabbyには、

If something or someone is shabby, they look old, dirty or untidy.

また、suspiciousには、

If you describe someone or something as suspicious, you mean that there is something about them which makes you think that they have done something they shouldn't have.

といった説明が加えられている。英語学習者にとっては、実に有益だと感じた。

さらに驚いたのは、ここに収められたすべての作品の朗読が、online上で、しかも無料で聴けることで、これも、行き届いた配慮だと感心した。もっとも、本を購入しないと、パスワードがわからない仕掛けにはなっている。

クリスティの作品は、長編も含めて他にも刊行されているようなので、それも試してみようと思っている。

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