雑感

かりんとう

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お菓子のかりんとうである。さまざまな種類があるらしく、湯島の花月のように、よく知られた名店もある。花月のかりんとうは、飴色で透明感のあるカリッとした仕上がりが好ましく、朱色の特徴のある丸い缶に入っていて、すぐにそれとわかる。

長野県内に手広く展開しているツルヤというスーパー・マーケットがある。信濃追分の山荘に行くたびに、そこで売っているかりんとうを買うのが楽しみだった。松本市の久星(きゅうぼし)食品で製造された黒糖かりんとうである。袋に入っていて、「かりんとう」の文字の上に大きく「久」と「●」とが書いてあり、それで久星と読ませるらしい。一つ一つはそれほど大きくはなく、見た目は素朴だが、何とも絶品の味で、こんなかりんとうはそれまで食べたことがなかったので、実に驚いた。花月の上品さとはまた違っていて、それからはしょっちゅう買って食べていた。

ところが数年前、突然、ツルヤの店頭から姿を消した。何かのトラブルで取り扱いを中止したのかと思い、店で尋ねたが、理由は不明とのことだった。
そのうち、少しずつ事情が明らかになって来た。久星食品の三代目が急逝し、会社そのものを清算することになったのだという。製法にも秘密があるらしく、後継者がいないことも会社清算の理由であったらしい。

その後、それに近い味のかりんとうがあるとの情報を耳にしたので、取り寄せてみた。製造地は掛川(静岡県)である。たしかに似てはいるものの、やはり何かが違う。かりんとうなど、小麦粉を棒状にして油で揚げ、それに黒糖をまぶすだけの単純な菓子だと思っていたが、なかなか奥が深いものらしい。

いまは、かりんとうの親戚のような播州駄菓子(ばんしゅうだがし)とやらを、近所のスーパー・マーケットで見つけたので、それを食べている。こちらは、素朴そのものの味で、それもまた悪くはない。だが、久星のかりんとうがやはり恋しい。

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