雑感

夢日記

投稿日:2021年12月3日 更新日:

夢日記、夢の記録というと、いろいろあるらしい。「こんな夢を見た」で始まる、夏目漱石の『夢十夜』になると、もはや夢の記録とはいえない。すぐれた文学作品、幻想性の中に人間の深層心理のありようを浮かび上がらせた、文学史上の傑作になっている。

ここで私がイメージするのは、つげ義春の夢日記である。つげは、たくさんの夢を、ごく簡単なイラストを添えて記録している。夢からヒントを得た作も、作品集『必殺するめ固め』などに、いくつも収められている。出世作となった『ねじ式』も、夢をもとにした作である。
つげの夢日記は、本人の言によれば、島尾敏雄のものを意識したという。ただし、私は島尾の夢日記は見ていない。

年をとって眠りが浅くなったためか、このところ夢をよく見るようになった。とはいえ、見た夢はあっさりと忘れてしまう。つげのようにすぐに記録すればよいのだろうが、そんなことをすると、神経衰弱になりそうである。第一、面倒くさい。

たまたま今朝は、家内が早朝の町内の掃除当番にあたっており、その目覚ましの音で目が覚めた。目が覚めるまで、ずいぶんはっきりとした夢を見ていた。そこで記憶に残っているうちに、その内容を記しておく。一夜かぎりの夢日記である。

どうやら中国の学会に参加しているらしい。昼食の時間になって、みな外に出ていくので、隣のS先生を見たら、よく寝ている。それで、一人で外に出た。だらだらした坂を下ると、店の建ち並ぶ賑やかな場所に出た。その中のだだっ広い食堂に入った。テーブルはたくさんあるが、どのテーブルも中国人で一杯。どこに座っていいのかもわからない。バイキング式の中国料理の店で、料理はたくさん並んでいるが、どう取っていいかもわからない。そもそも、食券も何も持っていない。この店には、以前にも来た記憶があるが、そこに表示してある店の名前は、昔と変わっている。何もわからないまま、店の中をうろうろしていたが、腕時計を見ると、会議再開の時間が迫っている。それで、何か食べなければと、店の外に出た。すると、いつのまにか、日本のどこかさびしい駅前になっている。大昔の向ヶ丘遊園の駅前(昔あった遊園地の側)のような感じである。
改札口の左に食べ物屋が数軒並んでいるので、そこに行ってみた。あたりには人っ子一人いない。薄汚れた狭くきたない店だが、カツ類を揚げている店らしい。入ると、店員は日本人ではなく、ベトナム人である。なぜベトナム人なのかはわからない。話すのは、あやしい片言の日本語である。入口のところで、何が出来るのかを聞くと、薄汚れた紙に品名を書いた紙束を渡してくれた。紙一枚に一品だけが書いてあって、あちこち折れたりしているのを束にしてある。カツ丼とは読めないが、カツ丼らしき品名を見つけて、それを注文したら、店員がにやりとしながら、カツは四切れ入っているという。そこで、目覚ましが鳴って目が覚めた。

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