韓国では、日本海という名が気に入らないので、「東海」と呼ぶような運動があり、国際機関にもそれを働きかけているらしい。およそ理屈にあわない主張である。日本海という名は、日本が領有する海の意ではなく、いわば地理的な目安に過ぎない。世界地図の視点で考えた場合、それがいちばんわかりやすい。一方、「東海」は、朝鮮半島から見た日本海のことであり、「東」という方角はどう考えても、地理的な限定をまぬがれない。つまり、世界地図の視点での普遍性がない。「東海」は、朝鮮半島に住む人びとにとっては、自然な名なのだろう。だが、それを国際的に通用させようというのは、どう考えても無理がある。日本は外交下手だから、このあたりどう主張しているのだろう。
環日本海文化圏という言葉がある。古代の文学や歴史を研究しているとわかるのだが、古代においては、大陸と直結した日本海側こそが日本の表玄関だった。
そのことがよくわかる地図がある。富山市が企画した「環日本海・東アジア諸国図」である。かなり大きな地図である。その中心が富山市であるのは、そこを環日本海文化の中心にしたいとする意図があるのだろう。
この地図は、ふつうのものとは違って、上下が逆さになっている。南が上で北が下になっている。これを見ると、とても大事な事実に気づかされる。大陸の側から見て、日本列島はあたかも太平洋へ進出する際の大きな障壁になっている様相が明瞭になるからである。この障壁は樺太(サハリン)から、日本列島、そして琉球弧をつないで、台湾にまで延びている。大陸からは、この隙間を通らないかぎり太平洋には出られない。
ふつうの地図だと、そうしたことが見えにくい。上下逆さの地図だと、この障壁はまさに蓋(ふた)である。興味のある方は、地図を逆さにして御覧になるといいと思う。
この障壁は、海洋進出をはかろうとする中国にとってはたしかに邪魔だろう。こういう位置に日本があることは、今後の中国との関係を考える場合、十分に留意しておくべきことのように思う。